カウンセラーはただ話を聞けばいい、の誤解!カウンセラーの必要十分条件、自己一致とは?

心理カウンセラーは、相手の話を聞くイメージがあります。しかし、ただ話を聞けばいいわけではありません。実はカウンセラーには必要条件があるんです。
カウンセラーの条件とは?
カウンセリングである来談者中心療法の提唱者、カール・ロジャーズ(1902-1987)はカウンセラーとして必要十分条件を6つ挙げました。
- カウンセラーは自己一致(純粋さ)してなければならない
- クライエントに対し、共感的理解(共感)をしていること
- クライエントに対し、無条件の肯定的関心(肯定)を持つこと
- カウンセラーとクライエントの間にラポール(信頼関係)が成立してなければならない
- 受容と共感がクライエントに伝わっていなければならない
- クライエントは自己不一致の状態にあることを知っておかなければならない
特にカウンセラーの三原則がとても大事
この中でも特に、カウンセラーの三原則が必要不可欠であります。
- 自己一致(純粋さ)
- 共感的理解(共感)
- 無条件の肯定的関心(肯定)
これらが備わって、カウンセリングの効果が発揮するとロジャーズは考えました。
今回は①の自己一致について学んでいきましょう。
カウンセラーは自己一致(純粋さ)してなければならない
来談者中心療法(カウンセリング)はクライエントの自己一致を目指していきます。
自己一致についてはこちらでも詳しく学習できます。

実はこの自己一致は、カウンセラー自身にも必要なんです。
自己一致とは一言でいうと、自分の気持ちに嘘がない状態のことです。
逆に自己不一致とは、自分の気持ちに嘘をついている状態のことです。
例えばカウンセリング中に、クライエントがつらい体験を話したとします。
カウンセラーそうですかー大変でしたねー
と、共感するような振りをするも、心の中では…



そんなの甘えじゃないかしら



私なんか、もっと辛い思いしたよ



あーお腹減ったなぁ、今日の夕ご飯、何にしよう…
など、考えていることが裏腹であってはならない、ということです。
この例の場合、理想の自己(相手を心配する優しい自分)と実際の自己(相手などどうでもいい、夕飯のほうが大事)にズレが生じているわけですね。
ではなぜ、それがいけないのでしょう。



いいじゃないの、どーせバレないし、夕ご飯のことを考えながら、適当にカウンセリングしたって…
そうは思っていませんでしょうか?しかしながら、そうした気持ちはクライエントにバレてしまいます。
実は本音を顔に出すまい、としてもインターバルコミュニケーションとして相手に伝わってしまいまうからです。
インターバルコミュニケーションとは非言語的コミュニケーションとも呼ばれますが、言葉よりも先に表情や動作が優先されて伝わる、というものです。
そうなんです、人は言葉よりも先に、顔の表情や体の動作などを瞬間的に感じ取ってしまうのです。
共感するような偽りの態度は見破られてしまうのです。カウンセリングで演技は通用しないんです!
さすがに夕飯のことを考えているかどうかまではわからないでしょうが、適当なカウンセリングをしている、ということは伝わってしまうでしょう。
カウンセラーの自己一致が大切な理由
こうした経験は皆さんも一度や二度はあるかもしれませんね。
例えば、
相手が、怒ってないよ、と言いつつ、顔が怒っていたら、やっぱり怒ってるじゃないの…となるわけです。
待ち合わせに遅れて、ごめん、待った?と聞いたとして、
相手は、全然待ってないよ、と言いながら貧乏ゆすりを速い速度でしてたらどうでしょう?
だいぶ待たせていたようね…となるわけです。
この非言語的コミュニケーションは、表情だけでなく声のトーンや声の大きさ、体の動きなど、言語以外の表現のことをいいます。その点に気をつけてカウンセリングを行わなければなりません。
もし、カウンセラーの自己一致ができていないと、



辛いですね
といった言葉も、



つらいですねー
と心がこもっていないような棒読みになってしまうことがあるんです。
そうしたカウンセラーの本音を敏感に察知したクライエントは、カウンセラーを信用しなくなり、自分の思ったことを伝えなくなるでしょう。そうなれば、クライエントはカウンセリングをやめてしまうのかしれません。
こうしたことからカウンセラーの自己一致が大切なんです。
自然な自己一致を目指そう
カウンセラーには自己一致が大切ですが、具体的にどうすればいいのでしょうか?
皆さんの大切な家族や親友、恋人が、切実な悩みを打ち明けたら、どう対応しますか。
自己一致がどうだのと、あれこれ考えずに心から心配して、相手のために真剣に話を聴くことでしょう。
これが自己が一致した自然な状態です。心から心配しているからこそできる対応です。
カウンセリングも同じことです。
本当に相手を心配しているのなら、自己が一致した自然な状態で対応することができるはずです。
変に小細工をしようとするのではなく、クライエントを共感し、肯定し、理解しようとする気持ちが
カウンセラーを自然な自己一致へと導いてくれるのです。
とくに、過去に同じような体験がある方ほど、その思いは強くなるでしょう。
そのような態度で接することでクライエントは安心してカウンセラーに思いを伝えることができるのです。
完璧な自己一致じゃなくてもいい
完全な自己一致を目指していくのは大切なことですが、人間自体が完璧、完全ではないため常に完全な自己一致でのカウンセリングは難しいと思います。
そもそも完全な自己一致をどう図るのでしょうか?
100%一致してたら良くて、90%ならダメなのでしょうか。そもそも人間であれば様々な感情を抱くことは自然なことです。それはカウンセラーも同様です。
カールロジャーズ本人も、カウンセラーの必要条件の、自己一致、共感的理解、無条件の肯定について
強く言い過ぎた、と話しているほどです。
ですから、絶対的に、完全な自己一致でなければならない!というものではありません。
ただしカウンセラーは、カウンセリングにおいて自己一致が必要なのことは覚えておきましょう。
