心理カウンセラーは、カウンセリング以外にも心理療法を使って

援助することがあります。

ではなぜ、心理療法が必要なのでしょうか?

心理カウンセラーなのだから、

カウンセリング方法だけを覚えればいいのではないか?

と、疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれません。

今回はそうした、心理療法とカウンセリングの違いについて

説明していきたいと思います。

目次

セラピストが行う心理療法とは?

人の抱える悩みというのは、実に様々です。

夫婦喧嘩ばかりでうんざりしている、突然別れようと言われた、

気になっている人に声をかけることができない、上司は私をわかってくれない、

友人とうまくいってない、子どもを叱りすぎてしまう、

ひきこもっている家族がいる、など、

人間関係の悩みで困っている方が多い傾向にあります。

こうしたお悩みの場合、まずはカウンセリングが行われます。

カウンセリングとは、相談、という意味で、

カウンセラーはクライエントの話に耳を傾け、積極的に傾聴していきます。

クライエントは傾聴されていく内に、こころに余裕ができ、

やがて問題点に気づくことが可能となるのです。

このように、カウンセラーが、ああしなさい、と指示するのではなく、

クライエント自身が問題の解決法を見つけ出せるよう、

援助していくのがカウンセラーの役割となります。


カウンセラーについて知りたい方は、こちらの記事を参考になさってください。



セラピーはこころの問題を抱える方に行われる

一方、心理療法(サイコセラピー)は、こころの問題を抱えた方に対して行われます。

カウンセリング(相談)ではなく、サイコセラピー(心理療法)であることから、

心理療法を行う人のことをセラピストと呼びます。

メンタル疾患など、こころの問題で悩んでいる、

また日常生活を送るのに支障をきたしている場合は、心理療法が必要になります。


心理療法を習得しなければならない理由

二本の木と二つのベンチ

心理カウンセラーになるために勉強されている方、

心理カウンセラーを目指している方からしたら、

カウンセリングの方法だけを学べばいいのではないか?

心理療法まで学ぶ必要はあるのか?


と、疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ではなぜ、心理カウンセラーは心理療法を学ばなくてはならないのでしょうか。

その理由は、カウンセリングだけでは限界があるからです。

話を聞くだけでは解決できない悩みもある

例えば、高所恐怖症で悩んでいるクライエントがいたとして、

毎朝ビルの高層階まで出社するのが怖くてしんどい、

と悩んでいたとしたらどうでしょうか。

このケースをカウンセリングするとして、

どのような変容がもたらされるでしょう。

話をこころから聴いていくことは、もちろん大事なことです。

しかし、話を聞くだけでは根本的な問題の解決には至らないこともあるのです。

こうしたことから、カウンセリングだけでなく、

心理療法の理論や実践を学んでいくことは、より多くの方々を

サポートできるという意味でも、とても大切なことです。

心理療法の種類

心理療法と一口に言っても、多くの種類があります。

ここではその一部をご紹介します。

精神分析療法

精神分析療法は、オーストリアの精神科医、ジークムント・フロイトが

創始しました。

フロイトは無意識に抑圧された防衛機制に気づいたり、

心的構造を力動的にとらえることによって

問題を引き起こしている原因が明らかになるとしました。

こうした問題の原因は無意識に行われるため、無意識を意識化することで、

症状が消失すると考えるのが精神分析療法です。

精神分析療法の特徴

こころの構造とはどのようになっているか?

人に説明するのは大変難しいものです。

しかし仮説ではあるものの、精神分析理論で説明すれば、

とてもわかりやすくこころの構造を伝えることができます。

精神分析療法が登場した後は、精神分析療法を基盤として、

多くの心理療法が創られました。

フロイトが精神分析療法を編み出していなければ、

心理療法はここまで発展していなかったもしれません。

こうしたことからも、無意識のかかわり方を発見した

フロイトの功績は大きいと言えるでしょう。


精神分析療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考になさってください。



来談者中心療法

来談者中心療法は、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが創始しました。

来談者中心療法の来談者とはクライエントのことであり、

その名の通りクライエントが中心となりながら、カウンセリングが行われます。

クライエントが中心となるカウンセリングでは、

クライエントは話したいことを自由に話し、

それをカウンセラーは積極的に傾聴していきます。

なぜなら、

【人は誰もが成長できる力、回復できる力を持っている。

積極的に傾聴し、受容や共感をしていくことは、自己治癒力を促す】

と、カール・ロジャーズは考えたからです。

来談者中心療法の特徴

来談者中心療法は、理論や技法よりも、

クライエントを尊重する態度が大切だと考える心理療法です。

今までの心理療法は専門知識も必要でしたが、来談者中心療法の登場によって、

多くの人が、

心理カウンセリング、心理療法に携わることができるようになったのです。


来談者中心療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考になさってください。



認知行動療法

認知行動療法は、心理学者のスキナーやウォルピ、アイゼンクによって

行動に働きかける学習理論をベースにした行動療法、

また、心理学者のアルバート・エリス(論理情動療法)や、

精神科医のアーロン・ベック(認知療法)らの療法などが発展し、

融合されたものです。

認知行動療法は、認知の偏り(ものごとの捉え方が偏っている)を修正したり、

不適切な行動を再学習することで、適切な行動へ変容させることを目的とした

心理療法です。

認知行動療法の特徴

認知行動療法は、研究によって科学的に効果があるとされ、

その信頼性からも世界的に使われている心理療法の一つです。

認知、行動ともに、いろいろな手法があるのも認知行動療法の特徴です。


認知行動療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考になさってください。



以上が代表的な心理療法ですが、他にも多くの心理療法があります。

人格の統合を目的としたゲシュタルト療法、

自我を分析することで性格特徴が分かる交流分析、

即興でドラマを演じ、自己洞察を深めるサイコドラマ、

箱庭作品を作ることで治癒されていく箱庭療法など、言葉によるものだけでなく、

身体に働きかけるものや芸術によるものなど、様々な種類があります。


心理療法をどのように選ぶか?

若葉

今回ご紹介した心理療法は、ほんの一部に過ぎません。

では、こうした数々の心理療法から、どう選べば良いのでしょうか?

「私は認知行動療法しか知らないから、認知行動療法を使おう」

「私は精神分析療法が好きだから、精神分析療法を行おう」

このように考えて、心理療法をクライエントに施すのは問題です。

その方法がその人にふさわしいかどうかは、

好き嫌いで決めるようなものではなく、

クライエントの人格や年齢、状況、症状等を十分に加味しながら、

心理療法を検討し、クライエントが納得した上で選択する必要があるのです。

また、クライエントはそれぞれ悩みが違うわけですから、

一部の心理療法のみ習得すればよい、というものでもありません。

前回のクライエントには、ある心理療法が上手くいったからといって、

今回新たに訪れたクライエントにも同じ心理療法が適応的とも限りません。

そのためセラピストは、臨床心理学の理論を学習し、

多くの技法をそれぞれ習得して、その人にふさわしいサポートができるよう、

正しく学んでいかなくてはならないのです。