心理カウンセリングって何をするの?話を聞く来談者中心療法をトーク例で覚える!


心理カウンセリングと聞くと、話を聞いていくイメージがあるかと思います。今回はクライエントの潜在的な回復を行う来談者中心療法を学びましょう。
心理カウンセリングとは、こころの悩みがある方への心理的な援助
心理カウンセリングとは、こころに問題を抱え自分らしく生きていくことが困難であるクライエントに対し、共に解決を探り、また歩みながら心理的な援助をすることをいいます。
心理的アプローチによるサポートも様々で、
- 精神分析的カウンセリング(問題は過去のつらいできごとにある、その問題に本人に気づいてもらう)
- 行動療法的カウンセリング(問題となっているのは不適切な行動。その行動を変えて問題解決を目指す)
- 来談者中心療法的カウンセリング(傾聴していくことで、自分を認めることができるようになり、問題を乗り越えることができる)
と、様々な形のカウンセリングがあります。これらは何れも心理学の学問から研究されたアプローチです。
人にはこころを治癒する力がある?
カウンセリング、と聞いて皆さんが思い浮かべるのが、来談者中心療法かもしれません。
来談者中心療法は、アメリカの心理学者、カール・ロジャーズが創始しました。
ロジャーズは人には元々、こころを自然に治癒(ちゆ)する力、問題を乗り越える力、成長することができる力を持っていると考えました。
たとえ心が傷ついたとしても自然に回復できる力を誰もが持っているのだ、と考えたのです。
来談者中心療法は、自己概念と実際の自己を一致させていくことを目的としています。
心の問題はなぜ起こるのでしょう。ロジャーズに言わせると、自己概念と実際の自己が不一致の状態にあるからだと考えています。では、自己が不一致とはどういうことでしょう?

自己概念とは自分の思い描く理想の自己像のことです。この自己概念は今までの経験、体験、他人の価値観によって形成されます。
こうでありたい自分、こうあるべき自分と現実の自分を比べてみて、その状態が離れていればいるほど、こころのバランスが乱れると考えたのです。
例えば、

私はモデルのようなキレイな女性!
という自己概念がある場合、



実際はモデルとかけ離れている…
実際の自分はモデルとはかけ離れている場合であれば自信を失ってしまいます。
これが自己不一致の状態です。
自己概念は他人の価値観の押し付けも影響されています。
人に影響されて、いつからか自分はこうでなければならない、と無意識に考えて生きるようになってしまうからです。
その不適切な価値観から、



自身のままでいい、ありのままでいい!



別にモデルじゃなくてもいいんだ!
と考えられるようになれば、適切な自己概念により実際の自己が一致していきます。
来談者中心療法の目的とは、こうして自己を一致させて今の自分を受け入れられるようにしていくことなのです。そのためにもクライエントを肯定、共感しながら話を聞いていくことが大切なんです。
他に例を挙げてみますと、



私はときには怒ってもいいし、優しい人間を演じることは必要ない。
という自己概念があるとしましょう。しかし実際の自分は、



性格が大人しいほうで、あまり怒ることもしない。
このように自己概念と実際の自分が離れていると、心のバランスが乱れてしまうんですね。
これを来談者中心療法を行うことで、もっと自分らしく生きてもいいんだ、と気づくことができるようになるのです。
共感、肯定が大事
共感や肯定をしながら話を聞いていくことを傾聴(けいちょう)と呼びます。心から話を聴く、という意味です。
聞く、ではなくて、聴く、になります。聞く、ですと、どんなものでも当てはまってしまいます。
話しているときに、そこにいるだけで一応、聞いてはいるわけです。
たとえ真剣に聞いていなくとも、心から聞いていなくとも、真面目に聞いていなくとも、とりあえず聞いてはいるのです。
そうではなく、心から話を聞くことが大切です。相手の言うことにきちんと耳を傾け、じっくりと心から聴いていく。これが傾聴です。来談者中心療法はこの傾聴をベースに進めていく心理療法です。
来談者中心療法で積極的傾聴をしていく
来談者中心療法の来談者とはクライエント(相談者)のことです。
クライエント、すなわち相談者が話を中心に進めていき、カウンセラーはそれを積極的に傾聴していくわけです。
人はじっくり話を聴いてもらったり、自分に関心をもってもらったり、共感されると嬉しく感じるものです。
自尊感情(自分が好き)や自己肯定感(自分の評価)が高まり、余裕が出てきることで自分にも他人にも優しくできるようになります。そうすることで自分の心の中の問題にも気づくことができるようになっていくのです。
また、人は話をするときに誰かから批判されたり、評価されたり、攻撃されることがありますが、
積極的に傾聴していくことでクライエントは、この人は私を攻撃しない、と考え、安心して話すことができるようになるのです。ですから積極的に話を聴いていく態度、積極的傾聴(アクティブリスニング)が大切なんですね。
来談者中心療法と一般的なカウンセリングとの違い
カウンセリングにも色々ありますが、ロジャーズのカウンセリング(来談者中心療法)と普通のカウンセリングでは、どう違うのでしょうか?
日常に行われているような一般的な相談、例えばお悩み相談などのケース



~で悩んでいます、どうすれば良いでしょうか?
と、アドバイスを求めます。



こうした方がいい、あぁしたほうがいい…
それに対し、カウンセラーはアドバイスを繰り返しています。



あなたの性格は、こうで、あぁで…
と、相手を分析したりもしています。



はい…はい……そうですね…
相談者は殆ど話さず、うつむき加減で、ときどき相づちを打ったり、質問にちょこっと答えるくらいで相談は終わります。
お悩み相談も相談ではありますからカウンセリングになるのですが、心理カウンセラーが行うロジャーズのカウンセリングとはだいぶ異なります。
一般のお悩み相談の場合、どちらかというと聞き手(クライエント)が中心になる場合が多いでしょう。
こうした対応が悪いと言っているわけではありません。
アドバイスにより、自分では気づかなかった選択肢が広がり、問題が解決する場合もあるでしょう。
一方、ロジャーズの来談者中心療法は逆の対応をしていきます。
相談者が中心となって、話をしていきます。聞き手は相づちを打つなどして話を聞いていきます。
その名の通り、来談者が中心となる療法なんです。
カウンセラーは、相手を共感し、肯定します。こうして相手を受け入れる態度をとっていくのです。
するとどうでしょう、



この人は私を理解してくれている、受け入れてくれる、この人は攻撃をしてこない。
と考えて、さらに深い所まで話をしてくれるようになります。
その深い部分も共感や肯定をしていくことでさらに信頼関係(ラポール)が育まれ、



自分のことを理解してくれる人もいるんだ!
と、自信を持ち、自己を受け入れることができるようになっていきます。
深い部分を吐露し、感情を出すことによって気分がスッキリするカタルシスも起き、だんだんと治癒力が高まり、自分の力で問題を乗り越えることができるようになっていくのです。
このように来談者中心療法は、来談者が中心となって話を進めていく必要があるわけです。
話をするのも、話す内容を決めるのも来談者なんです。カウンセラーはただただ、心を込めて話を傾聴していきます。
ですから、来談者が中心=来談者中心療法、というわけですね。
一般的な相談と、心理カウンセリングのトーク例
ここで一般的な相談と、心理カウンセリングの違いを見てみましょう。
一般的な相談の例



彼が浮気しているようなんです。問いただしても、相手は友達でそんな関係じゃないと言い訳するんです。
疑心暗鬼になり彼を信用できません。どうしたらいいのでしょうか?



彼が浮気してるって、なんで気づいたの?



彼の携帯を見たら、その女とのやりとりを発見したんです。



なるほどね。でも何であなた彼の携帯を見たの?



あなたは前々から彼のことが信用できなくて、彼と別れたいと思ってたんじゃないの?



あなた達は浮気が発覚する前から、実はもう関係が冷え切ってたんですよ。



……



浮気が発覚したから信用できなくなったというのはあなたの言い訳じゃないかしら。
それを確定的なものにしたいから、自分が安心したいから携帯を見たんでしょ?



そうかもしれません…。
心理カウンセリング(来談者中心療法)の例



彼が浮気しているようなんです。問いただしても、相手は友達でそんな関係じゃないと言い訳するんです。
疑心暗鬼になり彼を信用できません。どうしたらいいのでしょうか?



彼が浮気をしていたようだけど、彼はそれを認めないのですね。
そんなことがあって、彼を信じられなくなった…。〇〇さん自身はどうしたら良いと思いますか?



そうですね、浮気をしているのが事実であれば、それを認めてほしいし、
相手と別れてほしい。このまま今の関係を続けることはできません。



関係を続けることができない…。



はい。やっぱりそんなことがあったんだから謝罪をして関係を断ち切ってほしいですね。私もほんとうに傷ついたから、誠意ある謝罪もないと許せません!



うんうん!
いかがでしょうか。一般的な相談のほうは、少々極端な例となってしまいましたが、相手のことを決めつけがちになっていますね。クライエントは口数少なく、カウンセラーの言うことを大人しく聞いているようです。
いっぽう来談者中心療法では、相手を決めつけるようなことはしていません。
アドバイスをすることもなく、カウンセラーは傾聴しています。
カウンセラーはクライエントの発言をそのまま反射して返しているように感じませんか。
このようにロジャーズのカウンセリングは少し独特なのですが、カウンセリングスクール等ではこのロジャーズのカウンセリングを心理カウンセリングの基本として学ぶ傾向にあるように思います。
まとめ
ここまで簡単にまとめると
- 心理カウンセリングは、こころのお悩みのある方に、心理的な援助を行う。
- 傾聴とは、話をじっくりと耳を傾けて心から共感、肯定をもって話を聴くこと。
- 来談者中心療法の目的は、自己概念(自分を思い描く)と実際の経験(実際の自分)の不一致を一致させること。
- 問題を抱えている人の多くは自己が不一致の状態にある。
- 自己不一致とは、こうでありたい自分(理想)と実際の自分(現実)が離れている状態のこと。
- ありのままの自分ではない、言いたいこと言えない、やりたいこと出来ない状態。
- そこから自己一致(ありのままの自分、本当の自分)に一致させていく。
来談者中心療法で心に余裕ができると、いろいろな角度から問題解決を探ることができるようになるわけです。
ただ、来談者中心療法にもデメリットがあります。詳しくは以下の記事を参考にして下さい。


